堀口裕央

Yasuo Horiguchi  |  Photographer

ネパール マカルー 1
水、花、人

Nepal, Makalu 1 / Water, flowers, people

2018年7月20日~8月14日

すがすがしい朝(バックンカルカ)

一家総出(バックンカルカ)

子守(バーカルカ)

バザール(カドバリ)

棚田と少年(ワルン村)

田植え(ワルン村)

牛舎でほっこり(バックンカルカ)

まわし飲み(ワルン村)

熱路を行く(ワルン村)

ワルン村の子

久しぶりの土間(ワルン村)

みずみずしい棚田

マユム村の元気な子

おばちゃんと村の子(ツエドワ)

母と子(ヌム村)

こども世界(ヌム村)

ナマステ(ヌム村)

ヌム村

カンチェンジュンガを見る(バックンカルカ)

ネパール マカルー
水、花、人

Note

出発日:2018年7月20日・帰着日:8月14日

誰も来ない雨期を選んで、水、花、人の営みを撮りに行った。
撮影地は、親友ジミ氏(ネパール政府観光省公認1級山岳ガイド、旅行会社ふれあいネパール・社主)の故郷への訪問も含めて計画を立てた。
そのジミ氏から、重い言葉をもらう。
「雨期のこの地に観光客や外国の人は行かない。ルートもハードな旅になるので体力と強い心が必要です。理解の上で判断してください」。

7月20日(1日目)
阪急中山観音駅、5時18分出発 - 阪急梅田・空港バス - 関空。
ジミ氏は先に到着していた。
保険手続き後、ジミ氏の見送りを受け搭乗。
9時30分出発 - インチョン(韓国)11時20分到着 - 14時20分出発・カトマンズ22時到着。
カトマンズ空港にビカース氏(ふれあいネパール・現地社長)、デビ氏(ガイド)両氏がお出迎え。
2人は最初の遠征からのチーム堀口の主要スタッフ。
ホテルに直行し荷物の整理。カメラのバッテリーを充電し、就寝。

7月21日(2日目)
カトマンズ空港(1,330m)からツムリングタール空港(410m)へ。
ツムリングタールはエヴェレスト街道の玄関口・ルクラと違って蒸し暑く、のどかな南国風である。
乗合ジープでヌム村(1,560m、マカル登山の起点)に行く途中、カドバリ(1,040m)でバザールが開催されていると聞いて立ち寄ることにする。
バザール会場に入りびっくり。町の人たちはおしゃれでカラフルに着飾り、楽しく盛大。週に2回も開催されるそうで2度びっくり。
カドバリで車高の高いジープに乗り換えて途中マネバンジャング村(1,500m)で壮大で美しい棚田を撮影。
道路はぬかるんで悪路のため、多くの車がタイヤを取られて立往生。なるほど車高のジープに乗りかえた訳である。
やっとのことで終点ヌム村に到着。現在、チベットまでの高速道路を建設中である。
村はびっくりするぐらい子どもが多い。

7月22日(3日目)
ヌム村(1,560m) - ワルン村(1,650m)。
ここから先は、発電機とソーラー発電なので頻繁にカメラのバッテリーを充電する。
早速、村を撮る。
早朝、馬、牛、ヤギ、犬、鶏、バイク、トラック、トラクター、大人も子どもも大賑わい。
感心するのは年長の子が幼い子の面倒をちゃんと見ている。
10時頃にポーター3人がワルン村から宿舎にやって来た。ポーターたちの靴を買って準備完了。
昼過ぎからジミ氏の故郷、ワルン村に向け出発。
1,500m~700mに下り、1,650mに登り返し。
湿度が高く酷暑のため、道中、山から湧き出る小さな滝で水浴び。
体力の消耗が激しく4時間の行程が6時間。
温かいコーラを4本も飲みながら、やっとのことで到着。心が折れる。
ジミ氏の実家で、カトマンズでお世話になったジミ氏の弟、ビガーズ氏(ふれあいネパールの現地社長)と再会。
湧き水でシャワー。さっぱりした後、庭になっているバナナをご馳走になりながら温かいツボルグビール、粟焼酎を飲む。
夜は別棟のベランダで眠る。蚊はいない。

7月23日(4日目)
ワルン村に滞在。
村人の生活、学校、棚田、粟、稗、牛、霧の出た美しい村を撮る。
ポーターたちもジミ氏宅のベランダで寝ていた。
ジミ氏が通った学校を訪問し寄付をする。
夜、歓迎会を開いてくれて粟酒を洗面器でまわし飲みする。

7月24日(5日目)
ワルン村 - マユム村(人口30人位(1,750m))へ3時間半のトレッキング。
歩きはじめてすぐに大雨。
よろず屋さんで雨宿りしながら奥さんと子どもたちを撮影。
急登後、1時間ほど平坦な道を歩く。
ジミ氏の同級生が先生をしている学校に到着。今晩の宿である。
教室を借りて一泊。シャワーをしてさっぱりする。
ポーターが2時間ほど遅れて到着。運んでもらった荷物をほどき、寝どころを確保する。
村にビール、コーラは無くマンゴージュースを飲みながら村の生活を撮影。
子どもたちが学校に集まってくると親御さんたちも集まってきて撮影会となる。
学校に寄付をする。こまめにバッテリーを充電。
夜は大雨。

7月25日(6日目)
マユム村を8時に出発 - バラカルカに(1,850m)13時到着。
学校から谷を挟んで山の中腹に見える小屋が本日の宿泊地。
昨日仲良くなった子どもたちを撮りながら谷にかかっている吊り橋を目指す。
急勾配を落ちるように降り、やっとのことで橋に着くが、今度は苔、粘土で滑る急坂をヒル退治しながら登り返し。
そんなところをポーターはゴム草履で登っていく。
ロッジに到着。
牛の放牧時だけ滞在しているようで、奥さんは親せきの子どもの8歳の女の子と3歳の男の子を預かっている。
土間の囲炉裏で食事をする。土間には犬、猫、鶏がうろうろ。
乾燥トウモロコシが散らばると窓から鶏が飛びこんできて大賑わい。
夜は蚊との闘い。2時間程格闘するが、ロッジが隙間だらけですぐに大群が押し寄せる。
ヘルメットにネットをかけ、ガードして寝る。
ネットをかけてもヘルメットが無ければ直に刺されてしまう。

※カルカ(牛の放牧地)
以前はヌー、水牛等、牛の放牧は無かったが、登山・トレッキング客の要望により飼われることになる。
それに伴いヒルも山に居つくようになった。

7月26日(7日目)
大雨のため滞在。

7月27日(8日目)
バラカルカを6時30分に出発 - シヌダウカルカ(1,900m)に10時到着。
20分休憩し、バックンカルカ(2,600m)を目指す。
そのあとは休憩なしで急登をヒルと闘いながら5時間、本日のテント場に着く。
放牧している牛のそばで砂糖たっぷりのネパール茶、ラーメン・ラ王を食べる。やっぱり美味い。
一服している間にテントを設営してくれた。5人用の大テントを用意してくれていてびっくりした。
夜、大雨でテント内はプール状態になる。
ビガース氏とデビ氏がシートでテントごとカバーしてくれたため、快適に寝る。
とにかく、想定外の事態の対処方が勉強になる。
ヒル退治には塩をふりかけ、すり込むのが一番。
日本の登山ショップで売られている商品では間に合わない。

7月28日(9日目)
早朝、雨上がりの素晴らしい景色を撮影。
カンチェンジュンガ山系(8,586m)からの日の出。雲海。
バックンカルカを8時30分に出発 - コンマ(3,100m)に12時到着。
今日から石敷きで幅の広いマカルー・トレッキング街道を歩くのでヒルからの攻撃がなく快適。
コンマでは久しぶりに水で体を拭くことができた。
さっぱりして暖炉で体を温めてビール、地酒を飲み、テントでゆっくりする。

7月29日(10日目)
コンマを8時に出発 - ツロポカリ(3,800m)に14時到着。
早朝、雲海が素晴らしく、マカルー、カンチェンジュンガの撮影準備をしている間にガスが出て、雨まで降ってきて撮影出来ない。
今日から今回の撮影ハイライトである雨季の山、池、高山植物、滝、ヤク、カルカである。
3,500mあたりから、雨に濡れて咲きはじめの高山植物。池とガスとがマッチして素晴らしい景色が広がる。

7月30日(11日目)
滞在。
昨日、ガスで撮れなかった場所まで引き返して撮りまくる。
昼に放牧の牛の通路にテントを張っていたためにハリを蹴飛ばされ、テントが破れてしまい応急手当。
いろいろあります。

7月31日(12日目)
ツロポカリを7時30分に出発 - テマタン(1,700m)に15時30分到着。
池、岩山、高山植物、ガス、放牧の水牛。最高のロケーション。まだヤクがいる高度ではない。
雨期のため、滝のように水が流れる山肌を縦にアップダウンの連続の2時間。
洪水状態の川沿いまで降り、川に沿って滝を横切り渡っていく。
間違って滑ると濁流に飲まれる恐怖。沢靴とゴム靴下のおかげでグリップがしっかりしているので助かる。
テマタンの小屋に到着。
ここは放牧の人間が集う小屋で、旦那さんと奥さんの2人で生活をしている。
土間に囲炉裏があり、濡れた衣服、靴、靴下、ザックを乾かす。ベッドは布団が暖かくゆっくり寝る。

8月1日(13日目)
テマタン(1,700m)を7時に出発 - セルソンカルカ(2,000m) - ニーカルカ(4,484m)に16時到着。
早朝のガスのかかった幻想的なテマタン、水牛の放牧地セルソンカルカで高山植物、雨季のみ現れる岸壁から圧巻の滝を撮影。
4,000m近くになると酸素不足と、降りやまない雨で体の体温が奪われ、足が重くなって前に出ない。
とにかく山からの水が川になり行く手を拒む。
そのたびにデビ氏が安全に渡れる場所をさがし、対岸に導いてくれる。
ここらで今日のロッジが見えるはずだがガスで見えない。
1時間余り歩いてやっとのことでロッジに到着。
囲炉裏で冷えた体を温め、濡れた衣服、靴、ザックを乾かす。
ビガース氏が砂糖のたっぷりで熱々のヒマラヤ茶とラーメンを出してくれる。
日本茶はパワーが出ないので飲まなくなっていた。
ビガース氏、デビ氏らはアタックテントを組み立てて点検を行っていた。
明日は休養日とし、マカルーBC(5,000m)、セルベニ峠(6,720m) へのアタックに備える。
早めのアルコールタイム(ビール、粟酒)。地元の人と打ち解けて撮影会。
みなさんはロッジの経営者。ロッジの修理点検のために登ってきている。
その中にエヴェレストに10回登頂し、ネパールにある8,000m以上の頂を登頂したという、カトマンズで旅行会社を営む社長さんもいた。
明日、山を降りるという。

8月2日(14日目)
滞在。
朝から大雨、小雨の繰り返し。ゆっくり体力の回復をはかる。ロッジを修理する金づちの音が心地良い。
昼から囲炉裏を囲んで、はじめてヤクのホットミルクをいただく。
デビ氏から吉報。
明日、マカルーBCのロッジ点検のためにオーナーが行くから、テントでなくロッジに泊まれるとのこと。
濡れたテントのパッキングはつらくて重い。ポーターに余計な力を使わせなくてすむ。
5日分の食料、荷物の点検。明日からに備える。
本日もゆっくり地元の人とアルコールタイムを楽しむ。

8月3日(15日目)
ニーカルカ(4,484m)を8時に出発 - マカルBC(5,000m)に15時到着。
さて本番。気が引き締まる。
ロッジのオーナー親子が野菜を栽培しているというので撮らせてもらう。
ヤクとお花畑。ジミ氏が言っていた風景。
ヤクに近づくと逃げるので遠くから撮る。
しかし至る所で雪崩の爆音が鳴り響く。
マカルーBCが見えてきた。うれしい。
BC到着。
ロッジで荷物をほどき、寝る準備を終えた時、ビガース、デビ両氏が深刻な顔をして相談があるという。
「ポーターが高山病で頭が痛いと言っている」
なんと呆れることに彼らはそこでも粟酒を飲んでいた。すぐに下山させる。
100kgの荷物はオーナーに手伝ってもらって降ろしてもらえるようお願いする。快く了解してもらえた。
ロッジが雨漏りしているので屋根にシートを張ることに。体が軽い子どもがやってくれた。
夕飯はMCCのカレーを3人で食べ、部屋に帰って寝る。
いろいろある。

8月4日(16日目)
朝、ポーターが残した荷物を、ビガース氏とロッジを修理に来ていたオーナーにお願いして下ろしてもらう。
ガイドのデビ氏とマカルーBCを7時に出発。
セレベニ峠(6,720m)に行く途中の6,200m地点で13時。ニーカルカに向けて引き返す。
セレベニ峠のアタックキャンプの場所を確認と、6,000mを体感するためにトレッキング。
歩き出すとデビ氏が岩の下でひっそりと咲いているブルーポピーを見つけた。
帰国後、ジミ氏から「自然のブルーポピーはなかなか見られないのでラッキーだった」と聞かされる。
六甲高山植物園で見慣れていたので簡単に見られるものと思っていた。
今回のBCを確認し写真に残す。
マカルー、セレベニ峠の分岐を確認したいが、6,200m近くまで来ていたので引き返す。
BCに着くころから雨が降り出す。雨脚が強く、ガスも濃く体が冷える。
岩陰に人影。かわいい娘さんがヤクのエサを探しがてら迎えに来てくれていた。うれしい。
元気が出て歩くが、歩けど歩けど村が見えない。やっとのことで到着。
ポーターは迎えにこずトランプで遊んでいた。彼らはなんなんや!と思う。
すぐに着替えて暖を取りながら衣類を乾かし、ゆっくり寝る。

8月5日(17日目)
ニーカルカ(4,450m)を8時に出発 - テマタン(1,700m)に15時到着。
雨季ならではの山肌から吹きだす滝を撮影しながら下る。

8月6日(18日目)
テマタン(1,700m)を7時に出発 - ツロポカリ(3,800m)、12時着。
あの水が湧き出る山肌の急登を登れるかと心配したが、アドレナリンが出ているのか無事到着。
昼食にオイルサーディン(オイルも飲む)、黒砂糖をかじり、ゆで卵、ゆでジャガイモを食べる。
とにかくエネルギーが欲しい。
食事をすませ、1時からまた歩く。6時前にコンマに到着。
コンマまで行けると思っていなかった。
なんか見覚えのあるお姉さんがいるなぁ、と見ていると向こうから挨拶。
前にテント泊した時のロッジのオーナーの奥さんであった。

8月7日(19日目)
コンマを8時に出発 - デビ氏の親戚の居る村ツエドワ(1,800m)を目指す。
早朝マカルーが見え、大急ぎでシャッターを切る。
やはり近くで撮りたかったと無念が残る。
昨年はそうは思わなかった。終活・人生の残り時間を意識するようになったのだろうか。
マカルー街道を快調に下りる。
デビ氏の知り合いの村を通る。
デビ氏が知人を訪ねまわったり、そこかしこからお座敷が掛かったり前に進まないので一人で歩き出す。
1,800mまで下がってくると暑い。
ロッジに到着。
水浴びでさっぱりして、食堂に行く。
デビ氏の知人が多く、急きょホリホリ歓迎会となり、たっぷりアルコールタイム。
最終日だからポーター達とパーティーを開きたいとデビ氏から言われたが、断る。

8月8日(20日目)
ツエドワ村を7時に出発 - ヌム村に11時到着。13時出発 - カドバリに16時到着。
猛暑の中、ヌム村まで歩けるか心配。
日差しが強く、コーラと傘が頼り。
ヌム村に到着するとお決まりの水浴びでさっぱりし、久しぶりに冷たいコーラを飲む。
帰り支度をし、乗合ジープを待つ。
ポーターと別れ、悪路をバウンドするジープでカドバリを目指す。
カドバリではホテルに泊まる。
とにかくクーラー。あと暑いお湯でシャワーを浴びたい。だが両方ともなし。
服を着たまま洗剤をつけ、水シャワーで洗濯をする。
さっぱりしてからレストランで冷えたビール2本とから揚げを頼む。
久しぶり。やっぱり美味い。

8月9日(21日目)
カドバリ滞在。
飛行機は「お客が集まらないと飛ばないシステム」。
とにかく洗濯と天日干し。

8月10日(22日目)
早朝、飛行機が飛ぶとの情報が入ってカドバリを10時に出発。
15時半出発の飛行機で、カトマンズに16時半到着。
ホテルに18時半到着。
行きつけのホテル。クーラーと熱いシャワー。
なじみの土産物屋『カシミヤ』に顔を出し、お土産用の刺繍をしてくれるTシャツ屋さんに案内してもらう。
仲の良い店長とスタッフがいる日本食レストラン『桃太郎』で、冷たい日本のビール、日本酒。
店長が粟酒を差し入れしてくれる。これが美味い。
から揚げ、野菜炒めを食べる。和む。

8月11・12日(23、23日目)
カトマンズ滞在。
ビガース氏が23日の飛行機のチケットが取れたという。うれしい。
10月にアマダブラムにトライする予定なので、2人で『ふれあいネパール』のオフィスに行き、荷物を整理する。
あとはゆっくり、のんびり過ごす。

8月13日(25日目)
カトマンズ空港出発 - インチョン経由 - 関空。
無事に帰ってこられた。うれしい。

ジミ氏に言われていたとおり厳しい撮影山行だったが、終わってみるとまた行きたくなる。
「いつまで歩けるかな」
帰国後、体重が10kg減り、ドクターチェックでは、栄養が足りなかったせいか、びっくりするぐらいすべての数値(中性脂肪、血液数値等)が良くなっている。

ジミ氏いわく、
「ポーターが高山病や水当たりでお腹を壊したりするのに、堀口さんは体調を崩さない。すごい。そんな人いままで見たことがない」と。

山指導のクマちゃんからは「歩けることが大事」今回も痛切に感じ入った。

トレーニングして再びセレベニ峠を目指し、マカルー西壁、ヒマラヤ、地球を撮りたい。

撮影者

Photographer

堀口裕央

Yasuo Horiguchi

撮影機材

Photographing Materials

Camera:FUJIFILM GFX 50S

Lens:GF 32-64mm F4

撮影期間

Period

2018年7月20日〜8月14日

2018.7.20 - 8.14

当サイトに掲載されている写真の無断使用、無断転載は固くお断りします。
写真に関する著作権は、日本の写真に関する著作権法並びに国際条約により保護されています。

Contact : jhorihori209★gmail.com

★=@

Copyright by Yasuo Horiguchi. All rights reserved.